ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

休日の予定を組めない

「転職活動中は在職しておくべき」多くの転職推進サイトで言われていることだが、私が速攻ブラック企業を飛び出したのは、在籍していても転職活動がまったくできないという理由があった。

もちろん夜勤を含むシフト制だから、昼間も寝ていなければいけないとか、土日も仕事だとか、そういった制限はある。しかしそれは、シフト制企業では当たり前のことだ。ブラック企業では、それに加えて希望休を取ることができなかった。

通常、シフト制の仕事では月に二、三日は「希望休」を取ることができる。前月に「絶対休みたい日」を指定しておくと、その日は休みになるようにシフト作成者が配慮してくれるというものだ。

しかし、ブラック企業にはこれがなかった。理由は「いちいち聞いていたらシフト作成者が大変だから」というなんともあきれる理由だったが、たかだか30人程度しかいない現場で、全員の希望を集めるのはそれだけ大変なのだろうか。

OJTが忙しいから、今月だけは我慢してよ」と言われたことも何度もある。年に一回だけ新入社員を入れる企業が四月、五月にこういったことを言うのは分かるが、ブラック企業では毎月のように新入社員を入れていた。当然、OJTが行われていない日などない。希望休を聞いてくれるようになる日など永遠に来ない仕組みになっていたのだ。

当然、結婚式にも葬儀にも対応できない。二連休以上なんて数ヶ月に一度取れるかどうかというレベルだから、旅行なんて夢のまた夢だ。そしてこの単なるシフト作成者の怠惰がもたらす仕組みは、思いもよらぬところで社員のキャリアアップを阻んでいる。資格試験を受けることができないのだ。まだ転職を完全に決意していない頃、私は簿記二級の資格取得を目指していた。大学生時代に三級は取得していたが、その時点でも自分の肌に合っていると感じていたし、一生夜勤で勤務はできない、経理部にでも異動できたらラッキーだし、転職することになってもこの資格はかなりの強みになる、とも思っていたのだ。そのため、次はレベルアップをと思い、調子のいい日はそれでも真面目に勉強をしていた。しかし、希望休が一切出せないということは、試験を受けたいので休みにしてほしいなどと頼んでも聞き入れてもらえるはずがない。一度それとなく上司に打診してみたこともあったが、「そんなの必要ないでしょ?」とうさん臭そうな顔を向けられただけだった。

資格試験でさえこうなのだから、転職活動のため面接日を休みにするなんてとんでもないことだ。こうして社員のプライベートの予定をどんどん組めないようにし、必然的に会社と自宅の往復しかできない生活に社員を落とし込むのも、ブラック企業の巧みな技と言えるのかもしれなかった。