ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

きっと今年あの会社は潰れる

私が勤めていた企業は航空業界の単純作業を請け負う会社だ。

航空業界。昨今悲しいニュースしか報じられない、そして今最も危機に晒されている業界だ。ただでさえ、あんなレベルの中小企業は、この新型コロナウイルスの影響でバタバタと倒産していくであろうと言われている。

きっと来年の今頃、あの会社はなくなっているだろう。「専ら派遣」をしている先の、某航空会社の子会社から、もうお宅に業務を委託しないと切られるか。その会社からの入金が追い付かなくなって、社員へのあの僅かな、本当に僅かな給与も払えなくなって、破綻するか。あるいは社員から感染者が出て、業務自体がクローズしてしまうか。いや、もはや空港自体がクローズする日も近いのか…

いずれにせよ、あの会社は潰れるだろう。この新型コロナウイルスのせいで。

 

悔しくてたまらない。

 

私が身の縮む思いをしてくぐった東京地方裁判所の門を、社長もまたくぐるのだろう。そして安心と屈辱のまじりあった複雑な気持ちで、会社と己に下される破産宣告を聞くのだろう。そしていつかどこかで言うのだろう。「こういう会社を経営していたけれど、新型コロナウイルスのせいで倒産してしまったんだよ」そして、それを聞いた人はこう言うのだろう。「まあ可哀そう、運が悪かったのね、しょうがないわね、あの時はリーマンショック以上の不況だったんだから…」

 

悔しくてたまらない。

 

違うのだ。あなたの会社は、運が悪いから、新型コロナウイルスのせいで倒産するのではないのだ。倒産するべくして倒産するのだ。

恨みはある。この身を焦がすのではないかと思うほどの憎しみが、常に湧き上がってくる。退職から一年近くが経とうという今、幸せになった今でも。

私もおそらく、そこまでバカではない。罪は絶対に犯さない。法律と倫理は絶対に守る。しかるべき方法で、あの会社を潰したかった。

それは、労働基準監督署への正当な手続きを踏んだクレームであったり、彼らの犯している罪の告発であったり、まだまだ私には、やるべきことがある。あまりにも多くのやるべきことがある。それだけのことを、あの会社はしているのだから。

しかし、たった一人の従業員など無力だ。あまりにも無力なのだ。きっと私には、あの会社は潰せない。全てを暴露したとしても、全てを白日に晒しても、あの会社の取締役の一人変えられない。

労働者と企業は対等?そんなものは幻想だ。企業は、法人は、絶対的な強さを持っている。少しのことではびくともしない、憎らしいほどの強靭さを持っている。私がどれだけ足掻いても、与えられる影響など微々たるものだ。

それに比べて、この新型コロナウイルスの威力はあまりにも大きい。いくつもの企業を吹き飛ばすこのウイルスがきっと、あのブラック企業を一掃してしまうだろう。そして残るのは、「元従業員に復讐されたブラック企業」ではなく、「運悪く潰れてしまった、哀れな企業」

 

…悔しくてたまらない。

社内モラルで分かるブラック企業の特徴

仕事は自分が新人だから至らないのかもしれない、こういった苦しみを乗り越えてこその社会人なのかもしれない、と新入社員はとにかく我慢をしてしまいがちです。私も仕事内容だけに疑問を抱いているのであれば、こんなに早く転職を考えることはなかったでしょう。しかし、少し落ち着いて社内のあまりのモラルの低さを目の当たりにした時、「ここにいたくない」「ここにいたら危ない」と強く思いました。

 

・笑ってはいけないことを笑う

→二つ前の記事参照。韓国人の物まね、御巣鷹山墜落事故を爆笑、この二点を見て初めて、「あれ、この会社大丈夫?」と思いました。そしてそれは序章だった…

 

・犯罪が当たり前のように行われている

→具体的には、ロッカールームでのお財布の窃盗がたいへん頻繁でした。

 

・怒鳴る、殴るが当たり前

ガテン系の親方がいる仕事ではなく、9割女性の事務職です。「てめえ」「この野郎」がご挨拶、机を叩く、胸倉を掴むも日常茶飯事でした。暴力的な傾向を持った人間を野放しにしておくのは、管理職が間に入ることを面倒がっているか、「加害者ですら辞めたら困る」と思ってしまうほどの人手不足であることが挙げられます。

 

・遅刻者が多い

→シフト制の仕事で、早番は朝四時からの勤務ですから確かに起きるのは大変です。だからといって、毎日のように「すいませ~んタクシーに置いていかれちゃって」とヘラヘラしながら入室してくる社員がいるのは、組織として異常と言わざるをえませんでした。

 

・休憩時間でもないのに堂々とサボり

→「●●先輩はどちら?」「休憩室で昼寝じゃない?」という会話も日常茶飯事。この企業にいる間は楽かもしれませんが、ブラック企業は体力も財力ももちませんし、いずれは誰もが逃げるように転職していく身。これが日常茶飯事では、次に普通の会社、まともな会社に入ったときにひどく困るでしょうに…

 

・プライバシーがダダ洩れ、そしていじめ

→履歴書にしか書いていないようなことを管理職がペラペラと従業員に話し、そしてその情報を元にいじめが始まるという道徳観念がカオス状態。

人には触れてほしくないこともありますし、そこまで親しくない人にプライバシーを暴露するのも抵抗があるもの。そういった距離感を掴むのも大人としては大切なことですが、それを分かっていない人が多すぎる。

 

・ごく稀にいるまともな人がうつ病

→こうしたモラルが崩壊した現場にいると、まともであろうとする人は真っ先に壊れていきます。私は彼らと同様借金も重ねてしまった身ですし、自分は違う、まともだ、と胸を張るつもりはありません。しかし、仲がよかった真面目な同期は二ヶ月ほどで完全に心を病んでいました。上記のザルなプライバシー漏洩事件の被害者となった彼女から「もう私、本社の前で焼身自殺する」と本気で泣いて訴えられたときは、私も泣きたいのに泣けないし、もうここにいる限りどうにもならない、もう私もなんなら死にたい!と思うくらい頭がパニックになりました。(エピソード掲載許可済)

 

・なんならほんのり殺意を向けられる

→「屋外ではここを歩いてね」と、怒鳴り続けていた先輩がやけに優しく教えてくれた通路が実は「絶対に人間が通ってはいけない、フォークリフト専用道路」だった。

 

トラックドライバーが忘れ物をしたことに気づいたので先輩に報告したところ、

「じゃあトラックドライバーが入行許可書をもらう場所に今届けて」

「…そこ、トラック専用車線が五車線くらいあって、横断歩道なくて、今の時間ノンストップでトラック通ってて、人は絶対歩くなって言われている場所ですよね?事故に遭うかも…」

「交通ルールとか守らなくていいから行ってきて」

※ちなみにこの忘れ物は、今届けても翌朝のトラックが来ない時間に届けても同じもの

 

等、もう通常の思考回路では考えられないこと、嘘だと思いたいことが日常茶飯事で起こります。この記事の最後に「※この物語はフィクションです」とつけられればどんなにいいか。

しかし残念なことに、こうしたモラルが崩壊した企業は実際にあります。もう、短期離職をしたら履歴書が汚れるとか、世間体が悪いとか、そんなつまらないことを言っている場合ではありません。全力で逃亡するべきです。

OJTで分かるブラック企業の特徴

たった一週間の、形ばかりの座学を経ていよいよ現場へ。そこで広がる完全なる「地獄絵図」を見た私は、これはとんでもないところに来てしまった、と確信しました。

 

・「今日から配属の●●です、よろしくお願いいたします」と挨拶しても先輩の返事が「はぁ…」

→別に可愛がってほしいわけではありませんよ。これだけ歓迎していない雰囲気というのは、日頃の仕事も手一杯なので、OJTなんかやろうものなら更に仕事が回らなくなる、面倒だ、何も知らない人間が来て面倒くさい…こうした負の感情に押しつぶされているのです。「フレッシュな空気だ」なんて思ってくれるはずもない。

 

OJTの担当の先輩が入社一年以内

→二年目の先輩がほとんどいないという究極のブラック企業でした。ひどい場合は、先輩がマニュアルを盗み見ながら教えているケースも。全員知識がなんとなく不足しており、教え方がとんでもない伝言ゲームになった挙句、最初から間違った情報ばかり教えられるという場合もあります。

 

・先輩がとにかく怒鳴る!怒鳴る!怒鳴る!

→感情のコントロールは大人として当然でしょう。それすらできない人間が傍にいるだけで、身を削られるような思いをします。

もちろん、とんでもなく非常識な行為をしたら怒鳴られても仕方ないでしょう。しかし、

 

「●●ってフォルダ開いて」

「(大量のアイコンの中から初めて聞くファイル名を探す)えっと、」

「これだろーがー!ここにあんだろーがー!!!」

…迷ってる時間一秒でしたよ?

 

「ここに羽田空港のスリーレターコード(HND)入力して」

(HNF、と入力して即座にバックスペースを押しHND、に直した瞬間)

「てめえ!何やってんだチクショー!」

 

何をしても怒鳴られると萎縮してしまい、一時間ほど怒鳴られ続けた頃には漫画の表現のようにガクガクと手が震えていました。とにかく、なぜここまで自分が敵意を向けられるのか?そこまで私は恐ろしいミスをしているのか?と、訳が分かりませんでした。そして更に恐ろしいのは、担当の先輩が鼻息荒く、髪を逆立てて怒鳴り続ける横で、他の先輩たちはこれが本当にただの日常であるかのように淡々と仕事をしていたことでした。

 

・いきなり仕事内容を教えられ、それ以外のルールを教えてもらえない

→休憩の取り方やタイムカードの方法なども、「とりあえず教えといて」と上司が先輩に丸投げです。OJTの担当者が一人ならよいのですが、なぜか「日替わり」になっており複数の先輩が教えてくるため、誰もが「誰かが教えるだろう」と思い込み、結局誰も教えてくれませんでした。先輩も人手不足で仕事が忙しすぎるのですから、こう思ってしまうのはある意味当然かもしれません。ルールを最初にしっかり教えない上司のミスでしょう。

もちろん、「周囲を見ていればなんとなく分かるでしょ」というレベルのものではなく、タイムカードはパスワードを聞かなければ登録できないシステムでしたし、休憩に行くと伝えなければならない人がなぜか何人もいたりと、相当複雑なルールになっていました。

 

・入社一週間で勤続一年目の「ベテラン」レベルの仕事を求められる

→さすが「入力さえできれば大丈夫です」と宣伝動画で堂々と言っている企業なだけあります。それだけ仕事の中身が薄いということでもありますが、それでも常識外の急成長を求められていることには変わりなく、「段階的に教えていこう」「このスケジュールはさすがに無茶だ」という気持ちがありません。

 

すべてを一言で集約すると、「とにかく上司・先輩が手間暇をかけず、やっつけ仕事で新入社員をいきなり『ベテラン』に仕立てようとする」ということが特徴です。つまり、新入社員を「教育する」という姿勢が整っていないということ。

仕事は大学で学んだ知識が直結するものでないことが多く、一から人材を育てるのはそれなりの覚悟と時間が必要ではないでしょうか。それを分からず、もはや会社組織と呼べない無茶苦茶な組織を作り上げ、「会社」と自称しているのがブラック企業であると思います。

入社~座学研修で分かるブラック企業の特徴

この辺りが、逃げ出せるギリギリのラインになります。

 

【入社式】

・そのへんのレンタルスペースなど、あまりにも簡素な場所で行われる

→ホール等を持ったり借りたりする資力もない。また、新入社員にとっては一生に一度の思い出深い日を、「まあこんなものでいいでしょ」と見くびっている。

 

・とんでもない条件の労働条件通知書をこの日に渡される

→この瞬間、それなりに嬉しそうにしていた新入社員たちから一斉に笑顔が消えます。

 

・初日から遅刻、忘れ物が続出

→それだけモラルのない人たちの中で自分がどう成長していけるのか、一抹の不安が胸をよぎります。

 

・社長がちょっと話して、10分くらいで終了

中途採用者を毎月採用しているようなブラック企業では、入社式ですら日常のこととなり、盛大にやろうという気持ちすらなくなっていきます。

 

・自己紹介もオリエンテーションもない

→社員にとって働きやすい環境を整えようとか、緊張をほぐそうとか、そんな気遣いもありません。あまりにも淡々としすぎていて、まるで「大学生のときに経験した郵便局での年賀状仕分けバイトの初日合同説明会」みたいな感じがしました。

 

【座学研修】

・マナー研修が一切ない

→そんなものを教えるよりは、とにかく研修を早く終わらせて現場に放り込みたいのです。そのためマナーがなっていない人間が現場に大量発生することに…

 

・研修自体が一週間

→アルバイトではありません。正社員です。とにかく早く現場に放り込まないと、人手不足すぎて現場が回らないのです。

 

・研修最後のテストは、教官が堂々と答えをカンニングさせる

→私は空輸業界ですので、空輸に関する知識のテストが最後出されましたが、「ノート持ち込み可」「マニュアル完全閲覧自由」「一定の時間を過ぎると教官が正解を指さし全員に合格点を取らせる」という恐ろしい状態に。不合格者を出して補習でもしようものなら現場が人手不足でパニックになるのです。あるいは、人を選んでいないがために当然、とんでもなく頭が悪い人も入ってきます。そのような人でも受からせないと、どうにもならないのです。

 

・教官や上司がリラックスさせようと笑いと取るが、差別的表現やモラルがない言動が多い

→空港での業務、必然的にかなりグローバルな業務ではありますが、上司が「韓国人の物まね」をして笑いを取るというモラル崩壊現場。ネットで見ても顔をしかめるようなものを目の前で見て、これが現実のものであるとは思えなかった。というか、ここに韓国のルーツを持つ人がいたらとか、考えないのでしょうか?

 

・大切なことを教わる時でもふざけている、しかも人間として色々おかしい

→飛行機に関する仕事ですので、当然のごとく御巣鷹山の墜落事故の話がされました。すると新入社員の一人が、「羽が取れたとか、ヤバーイ、ウケる!」と爆笑。

普通だったらその場で怒鳴られ、追い出されても文句は言えないことです。しかし、つられて他の新入社員も爆笑!上司まで爆笑!どこに爆笑の要素があるの!?

ドリフのコントで、志村けんが操縦するラジコン飛行機だけ墜落する、とかでしたらギリギリ笑えるのかもしれない(それでも今ならクレームたくさん来そうですけれど)…しかしこれ、多くの方が亡くなって、遺族の方も苦しまれて、そんな決して繰り返してはならない大惨事なのに。これで笑う人間が複数いること、誰も諫めないこと、これだけ取ってもかなり異様な職場であることが分かります。

 

とはいえ、「御巣鷹山の墜落事故を茶化すような会社では働けません!」とその場で辞表叩きつけて出ていくなんて、そうできることではないです。もう雇用契約は(口頭だけど)締結されていて、もう「滅多なことでは辞められない」状況にはなっているのですからね…私もこの辺りでは、「あれ、何かおかしい?」と思いつつも、必死でその不安を抑えこんでいました。

内定後~入社前に分かるブラック企業の特徴

【連絡編】

・内定のお知らせ以降音信不通

→まあ「音信不通」は言い過ぎかもしれませんが、内定者懇親会・研修・内定式といった行事は一切ありません。そういった出費を抑えたいほどひっ迫しているケースと、内定者に至れり尽くせりサービスをするモチベーションもないケース、下手に社内を見せたらブラックであることがバレるから敢えて見せないケースがあります。

その上、何を用意すればいいのか、この後のスケジュールはどうなっているのかということも何も教えてくれないため、「私、本当に内定者よね?」と不安になることもしばしば。それだけ人事部も怠慢なのです。

 

・必要な情報を後出しにしてくる

→「うちには寮があるよ」「じゃあ、私入ります」という会話を面接では確かにしたのに、入社半月前になって「引っ越しした?あ、女子寮はないから。」と言われる始末。ルーズな会社にロクなものはありません。

 

【必要書類編】

雇用契約書がない

ブラック企業が蛇蝮のように嫌う雇用契約書。入社式で告げられる労働条件通知書は開けてビックリ玉手箱。というより、舌切雀の大きな葛籠。雇用条件なんてバカ正直に提示したら、内定者全員に逃げられることを自覚しているのです。

そして、雇用条件を提示しないことは労働基準法違反でもあります。それだけ堂々と法律違反をしている会社が、今後も残業代や労働時間に関する法律を、守ってくれるものでしょうか?

 

・給与振り込み口座を指定される

→これも指定することは労働基準法では禁じられています。ではなぜ、それでも指定してくる会社があるのか?

答えは、給与の振り込み手数料をケチりたいためです。会社の法人口座とは違う銀行に振り込むにはそれなりに手数料がかかりますし、何十人、何百人に振り込む際は、その手数料もバカになりません。

そのお金をかけたくない…そんなことを考える会社の経営状態が、いいわけがありません。

 

・「何かやらかしたら損害賠償します」という誓約書を書かされる

→これもまた違法です。それに、何だか「こいつら何かやらかしそう」と、まだ面接でしか会っていないのに会社から一方的に睨まれているようにも思えますよね。本当にまずいことをやらかしたら損害賠償請求をすることは民法上可能です。こんな予防線張らなくてもいいのですよ。自分たちは労働基準法をろくに守らないくせに、こちらのことは犯罪者予備軍のように扱う。

 

・更に上記に、「この人を保証人にします」と親のサインまで求められる

→更に疑っています。もう最初から、会社と労働者の間の信頼関係なんかあったものではありません。ここまでくるともう、過去に何かあったのか勘ぐってしまいますね。もしくは、こんな会社で働いても従業員には損害金を払うほどの資力はないのだから(実際に私なんか自己破産したし…)親を最初から巻き込んでおこうという算段でしょうか。

 

以上まとめると、「労働者の権利は一切守らないのに、会社の権利は二重三重に予防線を張って守る」というのがブラック企業の特徴だと思います。

採用過程で分かるブラック企業の特徴

【面接前編】

・提出物が異様に少ない

→志望動機や作文、学生時代の成績等こちらが準備しなければならないものが少なく、儀礼的に「履歴書だけ持ってきて」と言われる。多角的に志望者を見よう、そして厳選しようという意志が見られない。

 

・事前提出物が到着してすぐに面接の呼び出しが来る

→これも同じ理由です。とにかく、中身を見ていない。つまり誰でもいい。

 

・どんなものを出しても面接に呼ばれる

→「●●株式会社 様」になっていようと、履歴書をシャープペンシルで書いていようと、とにかく何が何でも通過する。

本当はやってはいけないことですが、私は退職後、前職がリクナビNext中途採用者を大量に募集しているのに気づきました。リクナビ上のフォームで簡単な経歴や志望動機を入力し、それが通ったら履歴書を送ってください、とあったので、捨てアカでリクナビNextのアカウントを取得し、「誰もがドン引きするほどのキラキラネーム」+「東京都で一番偏差値が低い高校中退」+「少年院行き」+「以後職歴ゼロ」+「志望動機は『ウチにもできそう』」という情報を、誤字脱字のオンパレードで送ってみました。そして結果は…

 

見事合格!それもその日のうちに即決!!

 

…別にね、こういう企業も必要だと思います。元犯罪者だってニートだって、何らかの社会復帰の足がかりがなければ現状から抜け出せないんですから…でもね、これだけ人を選ばず採用していて、表向き「うちは厳選しています」という態度を取り、「内定おめでとう!君を選んだんだ!」なんて白々しいことを言ってくるのは、どうも汚い部分があると思います。

こういった企業の恐ろしいところは、「誰でもいいから欲しい」と切羽詰まるほど職場環境が整っていない、というだけではありません。「この人は非常識だから落とそう」「この人と一緒に仕事をするのは無理だな」といったフィルターが一切働かないため、社会人として大切な部分が欠落した人間が次々と入ってきて、そして机を並べて仕事をするわけです。本当に、普通の生活をしていたら考えられない人間がたくさんいます。(自己破産するほど借金したあんたもそうでしょ、と言われたら本当に何も言えないのですが…)

そして当たり前のように非常識極まりない同僚から罵倒され、殴られ、尊厳をボロボロにされ、待っているのは短期離職をした汚い履歴書を引っさげた自分、だけなのです。

 

【面接編】

・体力の有無について聞かれる。ていうか、それしか聞かれない

→これはもうアウトです。体力がそれだけ必要なブラック企業です。

 

・面接官が完全に雑談モード

→新入社員を雇うのは、たいへんなコストがかかりリスクも負います。この人を入社させて大丈夫なのか、人事は常にピリピリするはずです。

しかしブラック企業の場合は、上記の履歴書事件でも分かるように「形だけ面接する、そして全員採用する」というのがデフォルトですので、厳しく目を光らせて志望者を観察する必要はありません。もう採用決定なのです。

 

・面接の日に制服の採寸や社員証の顔写真撮影を行う

→こちらも、採用がもう決まっていることが確定しているからこそできるものです。個人事務所などならいざ知らず、ある程度の規模の会社でしたら、面接後審議なりをして最終合格者を決めるものではないでしょうか。

 

・採用の電話も異常に早い

→悩んでいないのですから、もう即決です。

 

ブラック企業の採用は、全体を通してあれよあれよという間に進んでいきます。すると、これまで就活が難航し、「イケるんじゃない?」という希望すらなかなか持てなかったような志望者にとっては、まるでこれが「ご縁」であるかと錯覚するくらい、とんとん拍子にコトが進むのです。

企業側もそれを見越していると思います。ブラック企業の特徴は非常に多く、少しでも立ち止まって考えたら「ここ、なんだか怪しくない?」と思えるもの。そのように考える時間を与えず内定を出し、「あ、私、ここの会社に行くんだ!」と志望者に思わせてしまう。ブラック企業は行き当たりばったりな経営をしているように見えて、志望者を巧みに操る方法にだけは着々と磨きをかけているのだと思います。

面接前に分かるブラック企業の特徴

【求人広告編】

・毎月のように求人が出されている

→よくある特徴。退職者が多いという意味に他なりません。

 

・「若い人が多い職場です」「20代活躍中」

→社員はいても数年。そのため、社員を「どうせ辞めるんだろう」という色眼鏡で見て、使い捨てにすることが多い。

 

・数年後のキャリアアッププランが具体的に書かれていない

→私の場合は、「数年頑張れば航空業界の第一線で活躍できるよ」という甘い言葉に乗せられホイホイ入社してしまいました。今思うと、なんと抽象的であることか…「入社三年目の社員Aさんの一日」というスケジュール表に、今読んだだけでは訳が分からないほど難しい言葉が書かれているくらいでないと成長が期待できない。ちなみに私のいた会社での「第一線」は、「飛行機の、物理的に近くで働ける」という意味でしかなかった…ある意味、合っている…のか…?

 

・社員からのメッセージで「簡単なお仕事です」「入力できればいいです」などと堂々と言っている

→もう麻痺しています。それ言って恥ずかしくないんですか、プライドないんですか、という感じですね。「誰にでもできる簡単なお仕事です」と宣伝していいのは、高校生を対象にしたアルバイトだけですよ。

 

・「この会社のいいところ」とあげられた特徴が、なんかズレている

→私がいたブラック企業では、同じようなハンドリング会社が一つの空港で働いているため、「色々な会社の人と働き、色々な人と会える」と言っていましたが、明らかに苦し紛れです。だって会社自体、色々な人が集うもの。会社組織に所属しているというだけで、かなり色々な人と会えると思うのですが…

 

・「基本給●円」ではなく「月給●円」

→必ずしもこれがブラック企業の特徴というわけではないのですが、「月給20万円(内訳:基本給12万円+職能給8万円)」という悪い意味での開けてビックリ玉手箱の場合もある。

 

・社員の写真がなんとなく覇気がない

→特に女性が身だしなみに気を使っていない様子だったり、なんとなくあか抜けていない、生活に疲れたようなオーラが漂っていたら要注意。

 

・当たり前のことを福利厚生として書いている

→「福利厚生:ロッカー貸与」なんて、ロッカーない会社なんかあるか!?という感じです。それくらい絞り出さないと、何も書けないのです。

 

・新卒募集を2月や3月までしている

→根本的に人が入ってこず、次々と学生にお祈りされています。特にこの時期まで募集しているのは、内定者説明会などを経験して、何かしらのブラック臭を嗅ぎとった新卒に辞退された可能性も高い。

 

【口コミサイト編】

・誹謗中傷まみれ

→もちろん鵜呑みにするべきではないのですが、火のないところに煙は立ちません。また、嘘が書いてあったとしても、「そんな嘘を書いてやりたくなるくらいの、『何か』がある」ということでもあります。

 

・嘘では書けないくらい生々しいエピソードがある

パワハラばっかりで残業代も出なくて~」なんて、典型的な悪口ではなく「そんなことってあるの!?」と思えるような、普通の発想力では思いつかないようなことが書いてあったら真実の可能性が高いかもしれません。

 

【商業登記簿編】

・役員(代表取締役・取締役・監査役etc)が少ない、あるいは家族のみ

→典型的な同族会社です。豊かに意見を交換しながら会社を成長させるという考えがないため、「いつかいい方向に変わる」という期待ができない。今のままの経営が続く。

 

・本店登記が社長の自宅

→自宅を本店登記すると自宅の光熱費やローン等を経費で落とせます。そこまでして経費を削減したい=経営が苦しい会社、とも考えられます。