ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

OJTで分かるブラック企業の特徴

たった一週間の、形ばかりの座学を経ていよいよ現場へ。そこで広がる完全なる「地獄絵図」を見た私は、これはとんでもないところに来てしまった、と確信しました。

 

・「今日から配属の●●です、よろしくお願いいたします」と挨拶しても先輩の返事が「はぁ…」

→別に可愛がってほしいわけではありませんよ。これだけ歓迎していない雰囲気というのは、日頃の仕事も手一杯なので、OJTなんかやろうものなら更に仕事が回らなくなる、面倒だ、何も知らない人間が来て面倒くさい…こうした負の感情に押しつぶされているのです。「フレッシュな空気だ」なんて思ってくれるはずもない。

 

OJTの担当の先輩が入社一年以内

→二年目の先輩がほとんどいないという究極のブラック企業でした。ひどい場合は、先輩がマニュアルを盗み見ながら教えているケースも。全員知識がなんとなく不足しており、教え方がとんでもない伝言ゲームになった挙句、最初から間違った情報ばかり教えられるという場合もあります。

 

・先輩がとにかく怒鳴る!怒鳴る!怒鳴る!

→感情のコントロールは大人として当然でしょう。それすらできない人間が傍にいるだけで、身を削られるような思いをします。

もちろん、とんでもなく非常識な行為をしたら怒鳴られても仕方ないでしょう。しかし、

 

「●●ってフォルダ開いて」

「(大量のアイコンの中から初めて聞くファイル名を探す)えっと、」

「これだろーがー!ここにあんだろーがー!!!」

…迷ってる時間一秒でしたよ?

 

「ここに羽田空港のスリーレターコード(HND)入力して」

(HNF、と入力して即座にバックスペースを押しHND、に直した瞬間)

「てめえ!何やってんだチクショー!」

 

何をしても怒鳴られると萎縮してしまい、一時間ほど怒鳴られ続けた頃には漫画の表現のようにガクガクと手が震えていました。とにかく、なぜここまで自分が敵意を向けられるのか?そこまで私は恐ろしいミスをしているのか?と、訳が分かりませんでした。そして更に恐ろしいのは、担当の先輩が鼻息荒く、髪を逆立てて怒鳴り続ける横で、他の先輩たちはこれが本当にただの日常であるかのように淡々と仕事をしていたことでした。

 

・いきなり仕事内容を教えられ、それ以外のルールを教えてもらえない

→休憩の取り方やタイムカードの方法なども、「とりあえず教えといて」と上司が先輩に丸投げです。OJTの担当者が一人ならよいのですが、なぜか「日替わり」になっており複数の先輩が教えてくるため、誰もが「誰かが教えるだろう」と思い込み、結局誰も教えてくれませんでした。先輩も人手不足で仕事が忙しすぎるのですから、こう思ってしまうのはある意味当然かもしれません。ルールを最初にしっかり教えない上司のミスでしょう。

もちろん、「周囲を見ていればなんとなく分かるでしょ」というレベルのものではなく、タイムカードはパスワードを聞かなければ登録できないシステムでしたし、休憩に行くと伝えなければならない人がなぜか何人もいたりと、相当複雑なルールになっていました。

 

・入社一週間で勤続一年目の「ベテラン」レベルの仕事を求められる

→さすが「入力さえできれば大丈夫です」と宣伝動画で堂々と言っている企業なだけあります。それだけ仕事の中身が薄いということでもありますが、それでも常識外の急成長を求められていることには変わりなく、「段階的に教えていこう」「このスケジュールはさすがに無茶だ」という気持ちがありません。

 

すべてを一言で集約すると、「とにかく上司・先輩が手間暇をかけず、やっつけ仕事で新入社員をいきなり『ベテラン』に仕立てようとする」ということが特徴です。つまり、新入社員を「教育する」という姿勢が整っていないということ。

仕事は大学で学んだ知識が直結するものでないことが多く、一から人材を育てるのはそれなりの覚悟と時間が必要ではないでしょうか。それを分からず、もはや会社組織と呼べない無茶苦茶な組織を作り上げ、「会社」と自称しているのがブラック企業であると思います。