ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

採用過程で分かるブラック企業の特徴

【面接前編】

・提出物が異様に少ない

→志望動機や作文、学生時代の成績等こちらが準備しなければならないものが少なく、儀礼的に「履歴書だけ持ってきて」と言われる。多角的に志望者を見よう、そして厳選しようという意志が見られない。

 

・事前提出物が到着してすぐに面接の呼び出しが来る

→これも同じ理由です。とにかく、中身を見ていない。つまり誰でもいい。

 

・どんなものを出しても面接に呼ばれる

→「●●株式会社 様」になっていようと、履歴書をシャープペンシルで書いていようと、とにかく何が何でも通過する。

本当はやってはいけないことですが、私は退職後、前職がリクナビNext中途採用者を大量に募集しているのに気づきました。リクナビ上のフォームで簡単な経歴や志望動機を入力し、それが通ったら履歴書を送ってください、とあったので、捨てアカでリクナビNextのアカウントを取得し、「誰もがドン引きするほどのキラキラネーム」+「東京都で一番偏差値が低い高校中退」+「少年院行き」+「以後職歴ゼロ」+「志望動機は『ウチにもできそう』」という情報を、誤字脱字のオンパレードで送ってみました。そして結果は…

 

見事合格!それもその日のうちに即決!!

 

…別にね、こういう企業も必要だと思います。元犯罪者だってニートだって、何らかの社会復帰の足がかりがなければ現状から抜け出せないんですから…でもね、これだけ人を選ばず採用していて、表向き「うちは厳選しています」という態度を取り、「内定おめでとう!君を選んだんだ!」なんて白々しいことを言ってくるのは、どうも汚い部分があると思います。

こういった企業の恐ろしいところは、「誰でもいいから欲しい」と切羽詰まるほど職場環境が整っていない、というだけではありません。「この人は非常識だから落とそう」「この人と一緒に仕事をするのは無理だな」といったフィルターが一切働かないため、社会人として大切な部分が欠落した人間が次々と入ってきて、そして机を並べて仕事をするわけです。本当に、普通の生活をしていたら考えられない人間がたくさんいます。(自己破産するほど借金したあんたもそうでしょ、と言われたら本当に何も言えないのですが…)

そして当たり前のように非常識極まりない同僚から罵倒され、殴られ、尊厳をボロボロにされ、待っているのは短期離職をした汚い履歴書を引っさげた自分、だけなのです。

 

【面接編】

・体力の有無について聞かれる。ていうか、それしか聞かれない

→これはもうアウトです。体力がそれだけ必要なブラック企業です。

 

・面接官が完全に雑談モード

→新入社員を雇うのは、たいへんなコストがかかりリスクも負います。この人を入社させて大丈夫なのか、人事は常にピリピリするはずです。

しかしブラック企業の場合は、上記の履歴書事件でも分かるように「形だけ面接する、そして全員採用する」というのがデフォルトですので、厳しく目を光らせて志望者を観察する必要はありません。もう採用決定なのです。

 

・面接の日に制服の採寸や社員証の顔写真撮影を行う

→こちらも、採用がもう決まっていることが確定しているからこそできるものです。個人事務所などならいざ知らず、ある程度の規模の会社でしたら、面接後審議なりをして最終合格者を決めるものではないでしょうか。

 

・採用の電話も異常に早い

→悩んでいないのですから、もう即決です。

 

ブラック企業の採用は、全体を通してあれよあれよという間に進んでいきます。すると、これまで就活が難航し、「イケるんじゃない?」という希望すらなかなか持てなかったような志望者にとっては、まるでこれが「ご縁」であるかと錯覚するくらい、とんとん拍子にコトが進むのです。

企業側もそれを見越していると思います。ブラック企業の特徴は非常に多く、少しでも立ち止まって考えたら「ここ、なんだか怪しくない?」と思えるもの。そのように考える時間を与えず内定を出し、「あ、私、ここの会社に行くんだ!」と志望者に思わせてしまう。ブラック企業は行き当たりばったりな経営をしているように見えて、志望者を巧みに操る方法にだけは着々と磨きをかけているのだと思います。