ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

正社員就職

派遣社員として就労したのは某大企業の営業事務だった。一応前職は貿易事務というカテゴリーに入るのかもしれないが、事務らしい事務は何もしていなかっためまっさらな未経験者として営業部に配属された。もちろん一般職は責任のある仕事、クリエイティブな仕事はさせてもらえないし、派遣社員となれば猶更だ。しかし、それでも最初は精一杯だったし、いきなりハードルの高い正社員就労をするよりは、こうして段階的に鍛えていったほうがよかったと思える。

幸い、派遣社員を「おいハケン」と見下すような社風でもなく、私は社会人になって初めて一人の人間として尊重されたように思った。仕事は確かに単純作業の部類に入るかもしれなかったが、私の行う作業が正社員の、総合職のどのような仕事に繋がるのかを丁寧に説明してもらえたため、自分が何をしなければならないのか、どういった部分を工夫すればよいのかがクリアになる。更に担当の営業マンも爽やかで礼儀正しい女性であり、最初に書類を渡したときに「●●さん、ありがとう」と言われたときは、何と返答したらよいのか分からず固まってしまった。心の底からの感謝ではなく、むしろ挨拶程度の感謝でも、向けられれば嬉しいしやる気も増す。この人にいいバトンタッチができるにはどうしたらいいのか、といったことを自ら考えられるようになり、仕事が面白いと感じる。

居心地はいい職場だったが、もちろんここを安住の地とするわけにもいかない。定期的に転職エージェントに通い、履歴書や職務経歴書のブラッシュアップに励み、求人を吟味し、面接に向かう。もうかつてのように、「なんとなく、ここでいいや」という中途半端な就活はしなかった。中には、あちらは乗り気であっても私のほうから断った求人もある。

この期間に、無事簿記二級も取得できた。これを以て、経理部門や会計事務所でのキャリアアップも考え、就職活動の軸も絞れていく。目標が定まるとより志望動機が明確なものとなり、誰に勧められたわけでもない、自分の意志で進んでいるのだという自覚が持てて面白い。

こうして丁度派遣社員としての就労の契約期限である三ヶ月目を迎えようというときに、私は某税務事務所の内定を得ることができた。もちろん正社員就労であり、難解な業務もあるものの、その分やりがいも多く、キャリアアップの道筋もしっかりある道だ。

短期離職をすること、派遣社員を経歴に挟むことに対して相当葛藤はあったが、今となると思い切って決断をして正解だった。ブラック企業から離れ、勉強をする、次の目標を見つけるという時間を確保できたことは、何よりの収穫であったと思う。