ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

社会人としての自分の育て直し

ブラック企業では細分化された作業しか与えられていなかったため、私には社会人としてのスキルが何も揃っていなかった。そのため、就労開始より先にビジネスマナー及びパソコンスキルを学ぶためにしばらく派遣会社の本社に通った。

派遣社員であった時期はあくまで正社員就労へのつなぎであると認識しており、正直この期間に携わった企業や仕事への愛着は少ない。しかし、この研修こそ私を社会人として育ててくれたものであり、まともな社会人に育て直してくれたという恩を感じる。

名刺交換も電話対応も、事務用品の名前に至るまで一から習った。パソコンは大学生のときにレポート提出の際に使ったことはあったが、社会人だからこそ使うツールの説明などがかなり役に立った。

最も苦労したのは電話対応だった。もちろん敬語は学校でも家でも習ったし、目上の方への手紙などは辞書を引かずともすらすら書ける。しかし電話対応となると、頭では分かっていてもとっさに正しい表現が出てこない。なにせブラック企業では、お客様が目の前にいようとも、舌打ちをして「おい、てめぇ!」とドスをきかせるのが常識であったのだ。上司にタメ口をきく社員も大勢いた。その中でまともな丁寧語を話しているだけで、「何あいつ、お上品ぶっちゃって」「ここはそういうとこじゃねえんだよ」といじめのターゲットになるだけである。それに私は早くに凶悪な先輩に目をつけられたためか、何を話そうとしても「はぁ!?」「ちげぇ!」「そうじゃねえ!」と遮られ、思えばワンセンテンスをしっかり話したことすらなかったように思う。

秘書検定二級のテキストを買うといい、とアドバイスされ、早速書店で買い求めた。そこには、永久に作業しかさせてもらえず、見下され、蹴飛ばされる社会人生活ではない、しっかりと自分の足で立ち会社を支える社会人の、美しい姿が書かれていた。