ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

免責審問、そして免責許可へ

弁護士と委任契約を結ぶと、その翌日から督促の電話も手紙もなくなった。弁護士を立ててまで返済を拒否するなんて逆上させてしまうのではないかと思ったが、債権回収会社にとっては破産手続に入ることを告げられたら「そういうもの」と納得するしかないらしい。

裁判所への申立等はすべて弁護士が行い、私が次にしなければならないことは裁判所での免責審問に出頭することだった。免責不許可自由(ギャンブルやホスト狂いなど…確かに、こうした快楽に耽った挙句借金チャラでは虫がよすぎる)に該当しないことを裁判官の前で説明する必要があるのだ。何を詰問されるのか、自己破産に至った自分の弱さ、甘さを徹底的に尋問され、何を言っても論破されるのではないか。裁判所という慣れない場所に行く恐怖から、ありもしない妄想を毎晩してしまったが、実際は氏名と本籍地の確認くらいしか私が発言するべきことはなかった。ここに至る経緯はすべて弁護士が書面にしているし、考えてみれば裁判官にとってはこれは毎日のようにある仕事なのだ。明らかに免責が認められるであろう人間をここぞとばかりにいびったり、問い詰めてしどろもどろにさせようなどという人はいない。こちらは大いなる屈辱と恥ずかしさを感じていても、裁判官はむしろかなり淡々としていた。呼ばれた先も厳めしい法廷などではなく会議室のような小部屋で、木槌を振り下ろすようなドラマチックな展開も皆無だった。(日本ではそもそも木槌がないと、同席していた弁護士が教えてくれた)

一週間後、法律事務所から免責許可が電話で告げられた。「おめでとうございます」と事務員さんは言ってくれたが、この自己破産がめでたいものになるのか否かはこれからの私にかかっている。裁判所からは借金の帳消しを許されても、私がここに至った私を許すかは、まだ不透明なままだ。