ブラック企業正社員が奨学金を返せず自己破産した話

当時23歳。航空業界某下請ハンドリング会社事務職。正社員でも奨学金返済ができず自己破産した経緯を語ります。

23歳OL、自己破産への一歩

23歳。世間からすれば、それは「あまりにも若い、若すぎる」と言われる年齢。まだ社会の荒波にも揉まれず、人生は希望に溢れ、時には無謀な挑戦もまだ許される。そんな年齢。

「自己破産」は、その年齢で背負うにはあまりにも大きく、重く、この先の長すぎる人生に影を落とすものであると、私ははっきり思う。人生というものの持つ重さを知らない「若すぎる」未熟者は、この現実に勇敢に向き合い、それを超えていこうという気持ちを持つことすら難しい。

今でも思う。あの日、ブラック企業に入る選択さえしていなかったら、私は自己破産をすることはなかったのではないか。金銭的な苦労など、「ヤバーイ、今月も金欠」なんて笑っていられる程度の可愛いもので、本気で「生きていけない」と八方塞がりになる経験など、しなくてもよかったのではないか。

一方で、そんな過去を断ち切りたい、もう前に進みたいと思いつつも、過去は消しゴムで消せるものでもない。胸を激しく絞られるような屈辱、恐怖、後悔と自己嫌悪に毎日苛まれ、「忘れなさい」というアドバイスに一度も従えない自分が歯がゆく、呪わしい。

 

こんな未来が待っていることなど露知らなかった一年前の私は、屈託なくブラック企業の人事部に「身元保証書」を郵送した。

雇用契約書」?そんなご立派なものはない。私と企業が対等な立場で結ぶ契約なんて、最初から存在しない。サインをするようにと言われたのは、「何か損害を発生させた場合は、親も連帯保証人として債務を負います」という誓約書。それだけだった。「こいつが何かやらかした時のために」と一方的に予防線を張られながらも、私はその企業の冷たい視線にまったく気づかなかった。社会など、それくらい厳しくて当たり前のものだと思っていたから。

「事務職だけど、給与は20万円以上だって」と、私は親に胸をはって言っていた。一般職は17万、18万という給与での募集が多かったが、それでは奨学金を返し切る自信がなかった。大学四年間で借りた奨学金は、500万円以上の債務となって膨れ上がっていたが、それを「債務」と認識できなかったほど、あきれるくらい私は初心だったのだ。

それでも「なるべくお金を返しておかないと…結婚する時に全然返せてなかったら

旦那さんは嫌がるかな」。それくらいの考えはあったのが、かえって最悪な道を開いてしまった。私は、まだ若いうちだからと空輸業界で夜勤を含む事務職を始める決断をしたのだった。